叩けタンバリン

 足湯というものに入る。
 自分では絶対に行かないだろう足湯。だって誰が足を浸けたかわかんない。でもいちおう温泉だし循環過程である程度きれいになるはず。と自分を納得させ入浴。入浴?
 2帖ほどの縦長の浅い湯船のぐるりを人が座る縁が囲み、頭上には木の屋根。脱衣所も荷物入れもあって設備全体がまだ新しい。先客は初老の男性2人、中年女性1人。こんにちはーと挨拶しながらベンチで靴と靴下を脱ぎスパッツ(スカートにスパッツだった)をたくし上げ足を浸す。水面は割ときれいに見えるが目を凝らすと見たくないものが見えそうなので凝らさない。
 目の前は1車線道路。その先に温泉旅館の駐車場そして山。山の斜面はぼーっと見てるだけで確実に視力回復しそうな新緑。小雨でちと肌寒く足を浸けて暖まるのにちょうど良い。今日は湯の出が悪い、とか常連らしい男性客達が話すのを聞きながら足のゆびを開いたりしてみる。自分は人さし指より親指が長く、連れの女性は人さし指のほうが親指より長い。人さし指が長い人は親を越えるって言いますねなどと喋る。喋りながら、親を越えるって何で越えるんだろう、随分抽象的な言い方だなと思う。